工藤悠一郎さん(昭和40年卒)のエッセイ
五回目の石巻演奏会
東日本大震災で津波により壊滅的な被害を蒙った宮城県・石巻市の渡波(わたのは)地区で倶楽部グリーが演奏会を開いたのは震災から半年後の2011年9月である。
それ以降、昨年(2014年)7月まで4回訪問してみなさんから大歓迎されてきた。われわれは歌うだけであるが、その準備のために多くのボランティアや現地で面倒をみてくれる方々のお蔭で演奏会は開催できてきたのである。復興もスピードはともかく着実に進んできておりボランティアの方々も転勤などでなかなか集まらなくなってきたので、昨年の訪問で一区切りしようということになり現地の方々にもその旨伝えていた。そして渡波地区会長から「被災した住民を勇気づける取組を意欲的に行い、復興に多大な貢献をされました」と感謝状までいただいていた。
最後と思っていた石巻訪問も「有料でも聴きたいので、また来て欲しい」とまで云われてしまいわれわれの心も揺れ動いていた。前回までは小学校訪問や女川、牡鹿地区など渡波以外も訪問していたが、準備の負担を少なくするために今回は渡波地区だけでの演奏会となり5回目の訪問が実現できた。(2015年7月4日~5日)
津波で壊れた自宅を建て直して民宿を経営するN女史は第一回の訪問以来 「追っかけ」のように石巻でのわれわれの演奏会を聴きにきてくれている。昨年秋の杉並公会堂での倶楽部グリー10周年演奏会には忙しい仕事の合間をぬって日帰りでわざわざ東京まで聴きにきてくれるほどの熱心なファンである。今回のわれわれ一行21名の宿泊は彼女の民宿にお願いした。一度にそんな人数が宿泊することはないとのことであったが、学生時代の合宿を思い出すようで楽しいひと時を過ごすことができた。バーベキューや美味しいカレーライスなど心もこもったおもてなしに一同いたく感激したものである。
演奏会は第一回以来いつも盛り上がる黄金浜会館と渡波公民館の2ケ所で行った。大漁旗に囲まれた会場の黄金浜会館は今年も熱心なお客さんで大いに盛り上がった。プロも頭がさがるという南方昭彦君(昭和45年卒)の軽妙なMCが一段と会場を盛り上げるのである。毎度のことであるが石巻のご当地ソング「斎太郎節」では踊りも加わり誠に楽しい雰囲気になる。渡波公民館は渡波地区の芸能祭にわれわれの演奏も組み込まれ150名くらいの方々が熱心に聴いてくださった。
「来年も楽しみにしてますよ!」などと云われてしまうと、私個人としては準備される方々にそんなに負担がかからないのであれば現地の方々の希望を叶えてあげたいと思ってしまう。「りんごの歌」「夏の思い出」「花は咲く」「ふるさと」を一緒に歌ったが楽しそうなみなさんの表情を見ていると震災の心の痛手は少しづつではあるが遠くの方に行っているのかなと思えてくるが、現実はまだまだ厳しいものがあるのだろう。 本当の意味での昔どおりの生活に早く戻ってもらいたいと願わざるをえない。
今回われわれが歌った曲は以下のとおりである。
全曲とも指揮者丸山はるお君(昭和42年卒)が編曲してくれたものである。
① いい日旅立ち
② 広い河の岸辺
③ Pearly Shells
④ 遠くへ行きたい
⑤ 岬めぐり
⑥ 青春メドレー(若者たち、学生時代、青春時代)
⑦ この街で
⑧ ふるさとは今もかわらず
2015年7月
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